間違ってもいいから思いっきり

私たち人間は、言葉で物事を考えている限り、あらゆるものを「是か非か」と格付けする乱暴な○×ゲームに絶えず影響されています。ここでは、万人が強制参加させられているこの言語ゲームを分析し、言葉の荒波に溺れてしまわないための知恵を模索していきます。

◆私の泳ぎ方

国家の幻覚

普段は高校の非常勤講師として、数学を教えている私。 学校での授業はチャイムとともに始まりますが、チャイムが鳴るより前に教室に行くと生徒同士の雑談を耳にすることもあります。 そんな雑談の中で男子同士が「今回ばかりは積んだな」「次見とけよ」など…

歩兵教育の惰性

「安易に学級崩壊という言葉を使うのはおかしいのではないか」 そう私に語りかけてきたのは、小学校で勤める友人。 彼女は日本人なのですが、家族の仕事の関係で海外生活が長く、初等教育はドイツで受けています。 そのため彼女は、日本の初等教育のあり方を…

恋愛にたとえる数学

私の本職は高校の数学教師。 当ブログのテーマは人間を変容させてしまう言葉の影響力なのですが、こうした言葉へのこだわりも元々は数学との関わり方から生まれたものです。 http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2014/06/29/053200 数学とは、自然科学…

生徒と語る自己啓発

以前「本当の幸せ」という記事で、この大袈裟な言葉に付きまとう「あなたは本当に幸せか」といった強迫的なメッセージの危険性について述べました。 <a href="http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2014/04/30/191700" data-mce-href="http://mrbachi…

正しい子どもと複雑な大人

高校一年生の頃、私は筒井康隆の『やつあたり文化論』というエッセイ集と出会いました。 この本の冒頭に収録されていた「ゴルフ嫌い」というエッセイは、当時の私に強烈なインパクトを与えます。 やつあたり文化論 (新潮文庫 つ 4-9) 作者: 筒井康隆 出版社/…

内田樹と私

私が内田樹の文章と初めて出会ったのは、大学院生だった2005年の夏。 彼は2005年5月3日に投稿した「憲法記念日なので憲法について」というブログ記事の中で、トリッキーな独自の護憲論を展開していました。 http://blog.tatsuru.com/archives/000961.php 『…

3年前の願い事

以前勤めていた高校で10人にも満たない少人数クラスを受け持っていた頃、教室内にミニチュアの七夕飾りを作ったことがありました。 そのときはクラスの全員が短冊に願い事を書き、教室で育てている鉢植えにそれらを吊るしていきました。「10キロ痩せたい」 …

お行儀との距離感

私たち人類は、言葉や概念を獲得することでその行動様式を大幅に変化させていき、地球上における今日のような繁栄を実現しました。 しかし、言葉や概念によるヒトへの矯正はパワフルかつストレスフルなもの。 貨幣やモラルや学問といった社会的習慣の発明は…

本当の幸せ

教員になって1年目のときの出来事です。 仕事を終えていざ帰ろうと職員室を出てみると、職員室のすぐ外で同僚が1人の生徒と話し込んでいました。 その生徒は職員室から出てきた私を見て、同僚に聞いていたのと同じ質問を私にも振ってきました。「先生はいま…

変なおじさん宣言

私は私立高校の非常勤教師として教壇に立ちながら、和太鼓・お囃子・民舞など日本の民俗芸能の普及活動に携わっています。 教師としてのキャリアは9年目で、これまでいくつかの高校で受験数学を教えてきました。 現在勤務している大阪の高校に来る際、採用試…

制度は動機を内面化する

私は現役の数学教師ですが、一般的な教師像とはかなりかけ離れた信条の持ち主だという自覚があります。 それは、私自身が教育そのものに対するありがちな動機を内面化していないから。 内面化というと何やら難しい言葉に聞こえますが、要は「学校での教育は…

数学の特権

果たして数学はヒトの教育に必要不可欠なものか。 現役の数学教師である私の答えはノーです。 もしヒトの成長に数学が必要不可欠というのであれば、近代教育の普及していない国は未熟者だらけだと言っているのと同じ。 世の中にはそのような考え方もあると思…

数学を勉強して何の役に立つのか

私は高校の非常勤講師として、パートタイムで数学を教えています。 このような仕事をしていると、「数学を勉強して何の役に立つんですか」という質問を受けることがあります。 このワンパターンな質問に対して、私は「どう役に立つのか」と愚直に解説するこ…

常識の方程式

世間での言葉の使われ方について、私がとことん追究し始めたのは数学を専攻していた大学生のころ。 私は物心ついた頃からずっと、人の行動を仕切りたがる押し付けがましい言葉の圧力に違和感を覚えており、他の要領の良い子たちのようには上手く折り合いをつ…