間違ってもいいから思いっきり(市井人の日曜研究)

私たち人間は、言葉で物事を考えている限り、あらゆるものを「是か非か」と格付けする乱暴な○×ゲームに絶えず影響されています。ここでは、万人が強制参加させられているこの言語ゲームを分析し、言葉の荒波に溺れてしまわないための知恵を模索していきます。

生徒と語る自己啓発

 以前「本当の幸せ」という記事で、この大袈裟な言葉に付きまとう「あなたは本当に幸せか」といった強迫的なメッセージの危険性について述べました。


本当の幸せ - 間違ってもいいから思いっきり


 この手の脅し文句は、カルト教団自己啓発セミナーが信者や顧客の獲得目的にも利用しがちなもの。

核ミサイルまがいの潜在意識ビジネス - 間違ってもいいから思いっきり

オカルトの誘惑 - 間違ってもいいから思いっきり


 そう書いてfacebookにもシェアしたところ、現在大学生になっている教え子の一人と、コメントのやり取りで盛り上がりました。
 その会話の末に、このブログが目指す「社会通念との闘い」というテーマに行き当たりましたので、そのやり取りを再録してみたいと思います。

【教え子】
自己啓発に関わる全ての人がつけこんでるわけではないと思うけど、少なくとも私の知ってる人たちは自己啓発セミナー(笑)的なことというより講演会的なことは無料でやってて自然と人が集まる感じですね~。
お金というリスクで意識を高めないと実行できない人もいるらしいからどっちがいいかわからないですが(笑)

【私】
そういう世界ではよく「自己実現のためには自分に投資をしなさい」などとまことしやかに言われたりするもの。
確かに言われるがままに「自分への投資」をする人が増えれば、そういう自己実現フリークに本を売り付けたりセミナーを開いたりすることで、本の筆者やセミナー講師自身はお金儲けという自己実現ができちゃう。
自己啓発の世界では、そんな薄っぺらな夢とむやみなハイテンションを感じさせるだけの錬金術もまかり通ってるよね。
そんな風にお金をつぎ込みたくなる人を造り上げるためによく使われる方便が、あなたは今本当に幸せなのかっていう懐疑思想なんだよ。
そして、著者やセミナー講師自身が誘導する課金の先に「本当の幸せ」が待っているかのようなことを匂わせる。
この錬金術は幸せへの飢えや渇きを造り出し増幅することで成り立っているから、「あなたの今のままの生活はそれだけで十分幸せ」なんてことはなかなかアナウンスされない。
でも、そんな風に増幅された飢えや渇きを持たされない人の方が、幸せなんじゃないかと思うんだよね。
何気ない日常のことに充実を覚える感性さえあれば、「本当の~」なんて絵空事は必要ないんだよ。

【教え子】
確かに確かに!!!
すごくわかります!!
私も一時期疑問を持ちつつも自己啓発本読んだりしてたんですが、やっぱり疑問が拭えなくて。
でも先生のコメントみてすごく腑に落ちました!
やっぱり、幸せはすぐそばにあることに気づけることが幸せなんだな~と感じました。
「不足」を指摘したり先生の言葉を借りると懐疑思想によってもたらされる「飢えや渇き」によって「支配」のエネルギーの入り込める状態を作ってしまうのはとても恐ろしいですね。
過激な言い方すると天使の顔をした悪魔みたい。
「悪魔ですよ~」といって近づくより、「天使ですよ~」といって近づいてくる人には、確かに騙されやすいでしょうが、そうやって心の隙にはいりこまれていつの間にか洗脳されて食い物にされているとしたら、悲しすぎる。
私たちはみんな幸せを感じる感性を疑いなんかで濁らせないで、最初からもこれからも「完璧」だということ、幸せだということ、忘れちゃいけないですね。

【私】
この錬金術で一番手強い相手は、お金儲けを企む「自称・本当の幸せ供給者」のような小物ではなく、「本当の幸せ」という思想を普及させて「本当の幸せ」という需要を生み出してしまった世の社会通念の方だと思うんだよね。
悪魔のように見える「自称・本当の幸せ供給者」も、最初は「本当の幸せ」を求めて何かに飛び付いていった犠牲者だったりするし、本人は自分のことを「本当に幸せをもたらす天使側の人間」と信じこんでたりもする。
つまり、カルトや自己啓発が宣伝するより以前に、世の中で「本当の幸せ」という懐疑思想が普及してしまっているがために、そういった小物たちが商売しやすいような土壌ができあがっている。
このブログを始めた目的は、そういった社会通念との闘いでもあるんだよね。
言い換えるなら「自称・本当の幸せ供給者」たちが商売し辛い社会の実現こそが、俺の密かな野望なんだよ♪
そんな俺の想いが響いてくれたかな?

【教え子】
響きましたよ~!!!
うんうん!!!
最初は犠牲者だったり、天使側の人間だとおもいこんでたり、、、すごくわかる。
この社会通念との戦い、先生がなさってることは大切なことですね。
一刻も早く皆の目が覚めて空虚な不安定なものを頼るのをやめて、今目の前の幸せに気づけることを心から願います。
先生こういう話できて嬉しかったです。
有難うございます(^_^)

【私】
自称天使側の人々のしつこさ・巧妙さはまだまだこんなものじゃないから、これからも自分は引っ掛からないと油断せずに気をつけて~!(`◇´)ゞ

 この対話は私自身にとっても有意義なものになりました。
 学校教育における目的の一つとして「社会を生き延びていくにあたって必要な知恵を育むこと」が挙げられますが、このような生々しい話は高校の教壇という場にはなかなか馴染みません。

 ですが今回はこうしたSNSを通すことで、社会に出始める大学生という時期に、滅多に語る機会のない重要な注意を喚起することができました。
 こうした社会通念との闘いをこそがこのブログ本来の目的ですので、これからも草の根からの発信を推進していきたいと思います。



※当ブログの主なテーマは、この世界を支配する「正しさ」という言葉のプロレスとの付き合い方。

http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2014/03/12/175400
※そのプロレス的世界観を支えている「記述信仰」の実態を、簡単な図にしてまとめています。

http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2014/07/06/051300