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間違ってもいいから思いっきり(市井人の日曜研究)

私たち人間は、言葉で物事を考えている限り、あらゆるものを「是か非か」と格付けする乱暴な○×ゲームに絶えず影響されています。ここでは、万人が強制参加させられているこの言語ゲームを分析し、言葉の荒波に溺れてしまわないための知恵を模索していきます。

保守とリベラルの仲良しプロレス

 プロレス興業の目的は、敵を倒すことではなく、試合をお客さんに観てもらって収入を得ること。
 プロレスがお客さんに注目してもらえる魅力的なエンターテイメントであるために、彼らは肉体を鍛え、技を磨き、演出を洗練させ、ストーリーを練り込んでいきます。
 例えば、ヒール対ベビーフェイスという軍団同士のお決まりの抗争なども、ストーリーを盛り上げてお客さんを取り込むための要素として活用されています。

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 では、日本の安全保障問題における保守とリベラルの論争は、何を目的に行われているように見えるのでしょうか。
 日本国内の当事者同士の言い分はともかくとして、この対立をアメリカ側から見れば、両者がグルになって「できの悪いプロレス」を演じているように見えるのかもしれません。
 その場合、プロレスの興業主である日本の目的は、安全保障上の盾としてアメリカを利用しつつも、アメリカへの軍事協力をネグレクトすることだと解釈されるでしょう。
 
 日本に平和憲法を押し付けながらも後に自衛隊の設立を後押ししたアメリカ側の思惑は、日本をアメリカにとって「無害かつ有益な属国」の立場に留めておくこと。
 自衛隊の活動範囲を狭く制限しておけば、アメリカの役に立つ場面自体は少なくなりますが、軍事的に去勢された日本がアメリカにとっての脅威になる危険性は減ります。
 憲法の縛りを緩くして自衛隊の活動範囲を拡大すれば、アメリカの利益のために日本の人員を活用できる場面が増える一方、将来的に日本を「自立できない属国」の立場に留めておくことが難しくなるかもしれません。
 
 アメリカとしては、日本を無害で無抵抗な属国の立場に留めたまま、より多くの場面でアメリカのために自衛隊を使い倒せる状況がベスト。
 宗主国であるアメリカ側のそんなリクエストに答えるべく、日本の政権は「国際社会への平和貢献」や「積極的平和主義」といった言い回しを駆使して、平和憲法の縛りをアメリカにとってのベストバランスにまで緩めようと努力させられます。
 
 ですがより威勢の良い右派は、日本がアメリカの属国として自立できていない状況を嫌って、アメリカにとってのベストバランスを越える程の現状変更を望んでいます。 
 憲法を改定して国としての交戦権を認め自衛隊国防軍に改名するだとか、日本も自衛のために核武装をすべきといった右派側の意見は、「日本は戦争のできる国にする気か」「日本を戦争に巻き込む気か」という左派側の反論をより一層煽ることになります。
 その結果、国論をまとめられない日本は、アメリカが求めるよりも遥かに狭い範囲でしか軍事協力ができなくなります。
 
 アメリカからすれば、日本は国の代表に「もっと協力する」と調子の良いことを言わせてアメリカ側の気を惹きながらも、最終的には「頑張ったけど無理でした」という言い訳をできるようにわざと国内でグチャグチャにもめさせているように見えるかもしれません。
 この茶番劇の目的は、アメリカへの軍事協力を最小限に絞りながらも、アメリカに対して「あなたのために尽くすつもりはちゃんとあるんです」「だから米軍は日本に置いててください」という態度だけはしっかりと見せておくこと。
 平和憲法によって防衛力を去勢された日本の、国を守るための狡猾な外交交渉の一環だととらえることができるでしょう。
 
 実りのないように見える日本のグチャグチャとした論争には、このような具体的な効能があります。
 ノンポリである私は、その論争の渦中に積極的に入っていくつもりはありませんが、やりたい者同士が活発に茶番をやりあっている分には、それを止めるつもりもありません。
 ただ、こうした茶番の材料として使われるそれぞれの陣営の説なり主張なりを真に受けて真剣に押し付けてくる輩がいれば、その相手が左派だろうが右派だろうが「お前らの茶番劇に巻き込むな」と振り払います。
 
 保守とリベラル、仲良く喧嘩しな。
 ノンポリの私はそのような心境で、日本人らしく的を外した罵り合いの様子を眺めているわけです。
 
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