教師として高校生に数学を教えつつ、プライベートで和太鼓を教えることもある私の指導上のこだわりは、曖昧な精神論に逃げずにできるだけ具体的な解説を目指すこと。
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この方針に従って、いつのころからか数学の計算ミスに関しても「気を付けろ」「よく見直せ」「ミスの重大さを肝に命じろ」といったありきたりな精神論以外の手法を伝えるようになりました。
その方法とは、計算式を書きながら眼球を小刻みに動かし続けること。
数学の問題では計算を進めるごとに何行も式を続けていくことがよくありますが、一つの式を書き上げるまでにの間に、今書いている式とその直前の式とを何度も見比べる習慣を身に付ければ、計算ミスは自然と減っていきます。
この手法で計算ミスが減るのは、高校数学における計算ミスでもっとも多いのが単純な「書き写しミス」だから。
前の式から次の式にうつるときにプラスとマイナスを写し間違える、数字が全然違うものに変わっている、xやtやaなど文字が別物に刷り変わっているなど、答えに至るまでの途中式が長くなるごとにこうした書き写しミスの出現頻度も増えていきます。
やってしまった書き写しミスを修正するためには、自分の犯したミスに気付けないといけません。
ですが、そもそも「書き写しミスはよく起こるもの」という認識を持っていなければ、自分に対して「書き写しミスをやってしまっているかも」という疑いの目を持てませんから、ミスの発見率は絶望的に低くなります。
逆に「書き写しミスはよく起こるもの」という常識さえ身に付けていれば、一行書くごとに新たなミスは起こっているのかもしれないのですから、今書いている式とその直前の式とを見比べるなんてことは極々当たり前の話です。
仮に一行書くごとに視線の往復を5回しているとしたら、問題文から十行の途中式を書くまでに、50回はこの小刻みな眼球運動を繰り返していることになります。
このように数十回の眼球運動を当たり前の癖のように修得してしまえば、後から見直すよりも時間がかかりませんし、計算ミスの発見率も飛躍的に向上します。
大変面倒な作業に感じるかもしれませんが、計算ミスは「次の行に移るまでほんのわずかな時間しかないのにまさか間違えているはずがない」という己の記憶力への過信から生まれます。
この手法自体も「さっさと先に解き進めていきたいけど、必ず起こるミスを無駄に見逃して、不安まじりの見直し作業を後に残したくない」という私自身のせっかちな性分から自然と生まれた、時間短縮のための工夫です。
一朝一夕には身に付かないテクニックですが、高校1年の早い時期から意識して練習していけば、大学受験までには確固たる技術へと昇華させることができます。
また、そこまで周到に準備しなくともこの作法の知識があるのとないのとでは大違いですから、数学のペーパーテストを受ける必要がある方は、これからでも試してみてはいかがでしょうか。