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間違ってもいいから思いっきり(市井人の日曜研究)

私たち人間は、言葉で物事を考えている限り、あらゆるものを「是か非か」と格付けする乱暴な○×ゲームに絶えず影響されています。ここでは、万人が強制参加させられているこの言語ゲームを分析し、言葉の荒波に溺れてしまわないための知恵を模索していきます。

頭でっかちな現代人は体幹が不器用

◆私の泳ぎ方 和太鼓・民俗芸能

 体幹の筋肉を中心に動かし、そこに手足の筋肉を連動させたほうが、はるかに大きな動力を得ることができる。
 そうした考え方のもと、従来のトレーニング理論を見直そうとする動きがあちこちで見られ、インナーマッスルだとか体幹トレーニングといった用語が巷に溢れるようになってきました。
 
 しかし、流行りの体幹トレーニングの中には、体幹を大きな樹や一本の棒のように見立てることで「しっかり固定できること」を目指すようなものも溢れており、それらのトレーニング自体は「手足との連動」に直接役立っていません。
 そのようにレンガのように固めた体幹を造るのではなく、プルプルと柔らかいコンニャクのような体幹を目指すべきだと訴えているのが、陸上短距離の指導者であり【骨ストレッチ】の提唱者である松村卓です。

ゆるめる力 骨ストレッチ

ゆるめる力 骨ストレッチ

 
 体幹トレーニングに対する松村氏のこの苦言は、「鍛える」という言葉を「筋力を強くする=筋肉を太くする」という風にしかとらえられない頭でっかちな風潮へのアンチテーゼ。
 動力を増すために体幹が重要なのはその通りなのですが、真に必要なのは「動かす方法」や「ゆるめる方法」の方であり、「筋肉を太くする方法」でも「固める方法」でもないのです。
 
 また、武術や胴体トレーニングの道場を主催していた伊藤昇という達人は、あらゆる身体パフォーマンスもその根幹となる胴体の動きは<伸ばす・縮める><丸める・反る><捻る>の組み合わせに過ぎないと説き、その3つの動きを向上させるための【胴体力】というメソッドを開発しました。
 伊藤氏はその方法を『気分爽快!身体革命』という著書にまとめ、1日3分、わずか3つの動作だけで、身体能力の開発だけでなく、身体の不調までも改善できるとプレゼンしています。
気分爽快!身体革命―だれもが身体のプロフェッショナルになれる!

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 こうした「体幹を自在に動かすノウハウ」に昔から興味を持っていた私は、和太鼓を打つ際にも自然と体幹から連動させていくようにと心がけてきたおかげで一打一打の重みや動作の躍動感・切れ味・滑らかさ・安定感などを向上させることができ、太鼓仲間から「そんな風に打つにはどうしたらいいか」と聴かれ続けてきました。
 そこで、いざ打ち方を教え出すと障害となるのが体幹の扱い方に関する固定観念で、「胴体を固定させたほうが安心できる」と信じて「胴体を固定させようとする癖」から抜け出そうとしない人は、いくらコツを伝えても素直に受けとることができません。
 そんなわけで最近は、体幹を固めたままの打ち方から、体幹と連動した打ち方に切り換えてもらうための和太鼓の基本練習の方法を研究しています。
mrbachikorn.hatenablog.com
 
 この練習方法を試してみて改めて痛感するのは、いくら気を付けても無意識のうちに体幹を固めたまま体の動かそうとしてしまう人の、これまでの身体操作の習慣の強固さ。 
 その中でも特にやっかいなのが「手を上げる」という動作に染み着いた固定観念です。
 
 人はそもそも、握手をするとき、頭上の棚から物をとるときなど、何気ない動作をするときには、自然と体幹から連動させて腕を操作しています。
 その人本来の自然な連動が崩れてしまうのが、頭で「手を上げる」と考えて手を上げているときです。
 このとき頭でっかちな人は「上げるのは手なんだから胴体は動かさない」という勝手な制限を加えて、体幹を固定したまま肩や上腕など外側にの筋肉だけで腕を引っ張り上げてしまうのです。
 
 つまり、体幹と連動した和太鼓の基本練習をする前に必要なのは、バチも何も持たないでただ単に「手を上げる」という動作をひたすら練習して身体への刷り込みを一からやり直すこと。
 というわけで、体幹と繋がった腕の動きを身体に覚えさせるための、新たな準備体操を考案してみました。
 
 同じように「手をしなやかに上げる」動作が出てくる踊りの練習でこの準備体操を試してみたところ、ほとんどの参加者が「これまでよりも楽に手が上がる」「体が軽い」という感想を得ることができました。
 この踊りの練習会では、最初に紹介した【骨ストレッチ】や【胴体力】のワークも合わせて体験してもらったため、体幹を固めたまま使うという固定観念がより緩和されていたのかもしれません。
 
 体幹は固めるものではなく、ゆるめて動かしてあげるもの。
 鍛えるのは筋肉ではなく、それを操作する神経、つまり私たちの「動かす感覚」です。
 そのことを忘れずに、闇雲な筋トレで「体幹を固定する」という固定観念を強化しないように心がけていきたいですね。
 
 
体幹で手を上げる準備体操】
①首胸伸ばし
②首胸背中伸ばし
③上体反らし
④腕の付け根上げ【三階】
⑤腕の付け根上げ【四階】
⑥腕の付け根上げ【五階】
 
①首胸伸ばし
気を付けの姿勢で「正面を向く」「真上を向く」の反復運動を行いながら、首を動かすことで胸が引っ張られて伸びることを確認し、首と体幹との連動の感覚を養う。
 
②首胸背中伸ばし
腰に手を当てて「正面を向く」「胸を前に突き出しながら真上を向く」の反復することで、胴体のしなりを自在に作る感覚を養う。
 
③上体反らし
「腕を左右に広げながら上体を腰から大きく反らす」「腕を閉じながら正面を向く」を繰り返しながら、より大きく全身のしならせる感覚を養う。
しならせるときに片足を一歩前に出して爪先立ちになることで、全身のしなりをさらに大きくしても良い。
 
④腕の付け根上げ【三階】
まず、体幹を固定し、正面を向いたまま片手を耳の後ろまで上げてみて、そのときに働く肩の筋肉の感覚を確かめる。
次に、片腕を胸の前に垂らし、肘を下に向けたままで上腕を肩甲骨から上げる運動を繰り返す。
このとき、体幹を固定したまま手を上げたときに働いた肩の筋肉を使ってはいけない。
肩甲骨を使う感覚が分からない人は、片腕を胸の前に垂らした状態のまま、首をすくめるような動きで上腕を上下させてみると、肩甲骨を自ら動かす感覚を呼び覚ましやすい。
 
⑤腕の付け根上げ【四階】
②で練習した胴体のしなりに④で練習した肩甲骨から腕を上げる感覚を重ね合わせる動きを繰り返すことで「目線を上げれば手が勝手に上がっていく」という体感を養う。
 
⑥腕の付け根上げ【五階】
③で練習した胴体のしなりに④で練習した肩甲骨から腕を上げる感覚を重ね合わせる動きを繰り返すことで「全身が伸び上げれば手が真上に放り投げられる」という体感を養う。
 
 
体幹と連動した打ち方のための基本練習】 
ドンコン×4というリズムを、10セットをかけてバチを上げる高さを【一階】【二階】【三階】【四階】【五階】の分類で色々と変えて打つ練習を行う。
その際、両腕を【前足の構え】の範囲内で使い、親指の付け根が正面か真下に向くようにし、両肘がバレーのレシーブのような軌道で内に絞りつつ上げることを徹底していく。
 
【前足の構え】
バチが打面に触れたとき、真下を向いた親指の付け根と真上に突き上げた小指と薬指の腹とでバチが挟まれており、肘が下を向いた状態で真っ直ぐ伸び、腕の付け根が四つん這いになる際の前足の位置に垂れ下がっていれば、体の重みが自然とバチ先に伝わる。
それと逆に、親指の付け根が横を向いていたり、小指や薬指でバチを挟めていなかったり、肘が外を向くように曲がっていたり、腕の付け根が胴体の側面にあったりすると、体の重みを活かせる配置にならないので、上腕や肩の筋力に頼る割合が増える。
 
この【前足の構え】の範囲内でバチを操作し続ければ、腕と胴体との間の「引っこ抜く勢い」の伝達がスムーズになる。
【前足の構え】から離れると「振り回したがり」な肩の筋肉のみが動力源になってしまい、腕と胴体との「引っこ抜く勢い」の連動は途絶えてしまう。
 
【一階】超低空
両腕を【前足の構え】に垂らし、手首は握手をするときの角度に垂らし、親指の付け根は真下を向かせ、手首・肘・肩は動かさずに、小指の微小な動きだけで打面にタッチする。
 
【二階】低め
両腕を【前足の構え】に垂らし、小指・薬指と親指の付け根を開きながら手首を上げでバチを持ち上げ、小指・薬指と親指の付け根でバチを挟みながら手首を振り回すことで、肘や肩は動かさずにバチを打面に持っていく。
 
【三階】中くらいの高さ(地方に便利)
肘が左右に開いてしまわないよう軽く内に絞りながら腕の付け根を肩甲骨からの操作で少しだけ浮かせ、バチはほぼ握らずに親指の付け根を正面に向けたまま手のひらに引っかけて持ち上げ、吊るされた紐を引くような軌道で小指を握りこみつつ肘を真下にストンと落とした勢いでしなった前腕ごとバチを打面に叩き付ける。
 
【四階】高め
腕が左右に開いてしまわないよう脇を内に絞りながら、肩甲骨の操作で顎が上を向き、胸が上下に開くように背中から伸び上がることで、腕の付け根を水平よりも上まで持っていき(肩で引っ張り上げずに胴体のしなりで放り投げる)、小指の握りによってかろうじて腕と繋がったバチを腕の根本ごと背中で引っこ抜くようなつもりで肘を勢いよく真下に落として打つ。
 
【五階】バチコーン打法
斜め上前方に向けて爪先立ちし、骨盤を前に出しつつ腰を反らし、気道確保のように顎を上げることで胸の上下方向の開きを最大にすることで、【四階】のときに活用した胴体のしなりがさらに大きな全身のしなりになって【前足の構え】にある腕の付け根をより高く放り投げることができ、そうして浮かした全身の重心が真下に落ちる勢いを小指の握りこみでバチに伝えて引っこ抜く。
 
【10セットの基本練習】 
事前に【前足の構え】の軌道を確認
1セット目【二階の高さで打つ】
2セット目【手首の動きをだんだん小さくする】
3セット目【一階の高さで打つ】
4セット目【手首の動きをだんだん大きくする】
5セット目【二階の高さで打つ】
6セット目【肘を少しずつ浮かしていく】
7セット目【三階の高さで打つ】
8セット目【胴体を少しずつしならせていく】
9セット目【四階の高さで打つ】
10セット目【全身を大きくしならせていく】