間違ってもいいから思いっきり(市井人の日曜研究)

私たち人間は、言葉で物事を考えている限り、あらゆるものを「是か非か」と格付けする乱暴な○×ゲームに絶えず影響されています。ここでは、万人が強制参加させられているこの言語ゲームを分析し、言葉の荒波に溺れてしまわないための知恵を模索していきます。

和太鼓の基本と応用

 和太鼓を打つときの私の流儀は、天井に刺さっているバチを全身の体重で引っこ抜くように打つというもの。
 ただ単に、腕を高く上げてバチを真っ直ぐ降ればいいという程度の理解では肩から先しか使わない「手打ち」にしかなりませんから、足腰のバネの勢いがをバチ先まで柔らかく伝える身体操作が必要となります。
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 太鼓仲間の中にはこの打法を参考にしたいと言って聴いてくる人も多いのですが、これまでの経験上、このやり方を何度か聞いただけでマスターできた太鼓打ちは一人もいません。
 特に和太鼓を長年やってきた人ほどそれまでの流儀が素直に吸収するのを邪魔するので、マスターしてもらうには繰返し訂正する必要があります。
 
 素直に吸収できない人にこびりついている固定観念とは、できるだけ全身を固定させ続けようとする癖です。
 動物は本来自由に動き回っていたがる生き物ですが、幼い頃から「じっとしていろ」「大人しくしていろ」というしつけを受け続け、初心者の頃に「できるだけ低く構えろ」「視線は正面に固定」「胸を張って上体はぶらすな」などと刷り込まれた人は、バチを握ったら「なるべく動かないこと」の方を標準にしてしまっているのです。
 
 なるべく動かないことを基本にしてしまっている「メジャーな和太鼓の打ち方」は、ボクシングで言えば「腰の乗らない手打ちのパンチ」ですし、野球なら「体重移動の曖昧な手投げのピッチング」や「腰の回らない腕だけのスイング」ということになります。
 そちらを基本にしてしまっている人が後から「体重のしっかり乗る打法」を覚えると、その打法は「いつも実践する基本の打法」ではなく「大きく打ちたいときだけ行う特別な打法」としてインプットされるのです。
 
 体重を利用する打法を「特別な打法」として処理する人は平常時に体重を利用しない打法を使っているので、いざ大きく打とうとするときに「スイッチの切り替えの不自然さ」が悪目だちしまいます。
 ですから、大きく打つときに体重を「自然に」乗せるためには、普段の全ての打ち方を体重の乗った打法に切り替える必要があります。
 
 大きく打ちたいときは体重を大きくバウンドさせ、小さく打ちたいときは体重を小さくバウンドさせ、極々小さく打ちたいときは敢えて全身の動きを止める。
 それはつまり、一般の太鼓打ちとは逆で、体重をしっかり乗せる打法を「基本」にし、なるべく体を動かさない打法を「応用」にするということです。
 
 わざわざ特別に意識しなくても、太鼓と向き合えば体重を利用するのが当たり前。
 そんな境地にできるだけ多くの人に達してもらえるよう、小手先だけで打ちたがる「手打ち」の癖を修正する「バチコーン打法」の養成プログラムを練るのが私のライフワークです。
 現代人に付きまとう「小手先癖」の弊害を乗り越えて、和太鼓の「基本」と「応用」の概念をひっくり返していきたいですね。 
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