間違ってもいいから思いっきり(市井人の日曜研究)

私たち人間は、言葉で物事を考えている限り、あらゆるものを「是か非か」と格付けする乱暴な○×ゲームに絶えず影響されています。ここでは、万人が強制参加させられているこの言語ゲームを分析し、言葉の荒波に溺れてしまわないための知恵を模索していきます。

液体をドリブルして重心の操作を覚えよう

 長野の歌舞劇団田楽座に初めて和太鼓を教わったとき、一番感動したのが「バチを通して自分の体重を太鼓に乗せる」という発想。
 和太鼓歴一年だった私は腕力に任せてぶっ叩くことしか能がなく、メンバーには「もっと力を抜いて」と常々言われていましたが、なぜ力を抜いた方が良いのか初めて納得できた瞬間でした。
 
 自分の体重を太鼓に乗せるには、重心を垂直落下させる勢いでバチを引っこ抜き、着地の勢いをそのまま太鼓に浴びせる必要があります。
 このときに肩や腕が力んでいては、せっかく生み出した落下の勢いにブレーキをかけてしまうことになります。
 慣性を利用して伸び伸びとバチを上げたり、落下の勢いをそのまま活かして深い音に変えるためには、ついつい力んで筋肉を縮めてしまう癖が邪魔なんだと理解できたわけです。
 
 14年前のその日以来、田楽座から教わった理想を体言することにこだわり続け、そのノウハウをいかにして仲間たちに伝えるかに苦心してきました。
 その際にいつも立ちはだかってきたのが、重心を落下させるという動作です。
 
 この動作を練習するとき、最も多い誤解が「ただ単に膝を曲げて腰の位置を上げたり下げたりすればよい」というもの。
 スクワットのようにスピードの遅い上下運動では、足腰はキツイは落下させられたときのような運動エネルギーは生まれないはで、それをするメリットが何もありません。
 
 この種の誤解を解くために生み出したのが「液体ドリブル」という練習法です。
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 これは、500mlのペットボトルに100ml程度の水を入れ、ペットボトル内で液体をフワッと浮かせてから勢いよく底に叩きつける動作を何度も繰り返すというもの。
 この動作を左右の手で行った後に、全身の水分や余分な脂肪や内臓などを、ペットボトル内の水のようにフワッと浮かせてドサッと落としてと指示すると、「重心を落下させる」という動作の意味が分かりやすいようでした。
 
 そもそも身体は固体と液体と空洞とでできており、これらが複雑に入り乱れることで様々な動作が実現できます。
 しかし、多くの人は目に見える固体の部分だけを真似しがちです。
 しかも、その固体パーツがだいたいどの辺りにあるかという曖昧な位置くらいしか意識することができず、その固体パーツが動く速度や軌道なんかにもなかなか注意が向きません。
 
 そんな人にこの「液体ドリブル」を体験してもらえば、重心の落下とは体内の液体や柔らかい固体などをペットボトル内の水のようにドリブルすることだと、その目と手応えで確認してもらうことができます。
 そして、その手応えをバチ先にそのまま乗せれば、肩や腕の力みだけに頼らず効率的に音を作れることが理解できます。
 
 バチを通して自分の体重を太鼓に乗せる。
 その第一歩として、ぜひ「液体ドリブル」をお試しください。
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