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間違ってもいいから思いっきり(市井人の日曜研究)

私たち人間は、言葉で物事を考えている限り、あらゆるものを「是か非か」と格付けする乱暴な○×ゲームに絶えず影響されています。ここでは、万人が強制参加させられているこの言語ゲームを分析し、言葉の荒波に溺れてしまわないための知恵を模索していきます。

バチと骨格を小指で繋いでつっかえ棒にする

 長野の歌舞劇団田楽座に「バチを通して自分の体重を太鼓に乗せる」という発想を教わって以来、およそ15年間こだわり続けているのが「体重が上手く乗るときと乗らないときの具体的な身体操作の違い」を割り出して、それを人に伝えること。
 前回は「液体ドリブル」という練習法を紹介し、自分の体重を預け切るための脱力のポイントを解説しました。
http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2016/11/27/233533
 
 そして今回は、脱力によって宙に放り投げた体重が落下する勢いを、できるだけ逃がさずに太鼓の打面に集約するための身体の使い方を解説したいと思います。
 それは、バチが太鼓の打面に当たるその一瞬だけバチをしっかりと握り、腕とバチを一体化させて「体重を支えるつっかえ棒」にしてしまうことです。
 
 この「つっかえ棒理論」のヒントをくれたのは、数年前まで田楽座で活躍し、現在は「和芸師とも」としてソロ活動をしている前田朋さん。
 あるワークショップで彼がこぼした「和太鼓で一番大事なのは小指の動き」という呟きの意味を考え続け、練習し続けたことで「上半身に無駄な力みを生じさないまま一瞬でつっかえ棒を出現させるために小指の動きが重要なんだ」と納得することができました。
 
 まず、握手を求めるときのように片手を差し出し、ジャンケンのグーとパーの中間の半開き状態の手のひらにバチを引っかけてそれ以上バチを握ろうとしなければ、無駄な力みのない柔らかなバチの持ち方が実現できます。
 こんなにゆるゆるの持ち方であっても、バチを小指に引っかけておくための最低限の力入っていれば、バチがすっぽ抜けてしまうことはありません。
 
 このゆるゆるの持ち方よりも遥かに強い力をバチを握っている大多数の太鼓打ちは、上半身の力みがブレーキとして働くためバチの稼働域が著しく制限されてしまっています。
 バチの稼働域をより大きく開放し、バチのスイングスピードを増すためには、手のひらとバチが触れる時間と面積を減らして極力ブレーキをかけないようにすることが重要。
 先ほど紹介したゆるゆるの持ち方は、バチに無駄なブレーキをかけないことを追求した結果なのです。
 
 そのゆるゆるの構えから、ダンディ坂野の一発ギャグ「ゲッツ」のように小指を親指の付け根に向けて引き付けると、手のひらの中でバチの根元が振り子のように旋回し、バチ先がテコの原理で勢いよくスイングします。
 このキレ味鋭いスイングこそが「鋭い小指の引き付け」の一つ目のメリットで、剣道の世界ではこうした「手の内」の使い方のコツが上達の鍵を握ると言われています。
 
 さらに、この「鋭い小指の引き付け」には、つっかえ棒を支える「地面」としての役割があります。
 据え置きの太鼓でバチを真下に降り下ろすとき、バチ先が太鼓の打面に当たる瞬間に、小指を鋭く引き付けてバチの根元を親指の付け根に圧し付けると、打面と小指の真上にバチが乗っかり、そのバチの上に親指の付け根・前腕・上腕などがつっかえ棒として乗っかり、そのつっかえ棒に全身の体重が乗ることになります。
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