間違ってもいいから思いっきり(市井人の日曜研究)

私たち人間は、言葉で物事を考えている限り、あらゆるものを「是か非か」と格付けする乱暴な○×ゲームに絶えず影響されています。ここでは、万人が強制参加させられているこの言語ゲームを分析し、言葉の荒波に溺れてしまわないための知恵を模索していきます。

蹴る和太鼓

 和太鼓で最大限に体重の乗った一打を繰り出すための要点は、重心を上方に浮かす勢いで腕ごとバチを放り投げ、重心を真下に垂直落下させる勢いで和太鼓の打面の上にバチで着地するように打つというもの。
 この際に必要となるのは、重心を激しく揺さぶるための脚力と、腕を真下に引っこ抜くための背筋力と、落下の運動エネルギーを逃さず太鼓の打面に伝えるための瞬発的な握力で、それ以外の部位を力ませるのは余計なブレーキにしかなりません。
 
 こうしたダイナミックな打法のことを「バチコーン打法」と名付けて普及していますが、一発ずつ丁寧に区切って打つまでであれば比較的簡単にマスターできるようです。
 しかし、大きく続けて二発以上連打しようとすると一気に難かしくなるようで、豪快な連打をマスターできる人の割合はぐんと下がります。
 
 それは、一打目のために垂直落下させた重心を、即座に浮かせて二打目に備えることができないから。
 小手先でなんとかしようと考える頭でっかちな人は「腕と肩の筋力」でバチを無理矢理高く上げようとしますが、それではスピードが足りないため、多くのビギナーは準備不足になる二打目の音が一打目よりも小さくなりがちです。
 そして、ここで「重心のフル活用」を放棄する人は、二打とも中くらいの音で済ませるようになってしまいます。
 
 落下させた重心を即座に上方に浮かすためのコツは、全身のリラックスと、足の親指の付け根による地面への蹴り込み。
 落下させた重心を受け止めると同時に親指の付け根で地面を真下に蹴ることができれば、地面からの反作用が全身を真上に跳ね上げ、続けて垂直落下させるための十分なタメが即座にできあがります。
 このとき全身のリラックスができてないと、全身を跳ね上げようとしている反作用にブレーキをかけることになり、十分なタメが得られません。
 
 小手先だけの動作で何でも済まそうとしがちな現代人にとって、全身のリラックスと鋭い蹴り込みを両立させるのは至難の技。
 よほど身体操作の勘が良い人でない限り、意識的に反復練習を積み重ねなければマスターすることは叶いません。
 
 逆に言えば、地面の蹴り込みによる全身の跳ね上げという技術は、平凡な太鼓打ちと分かりやすく差を付けられる効果的な武器だということ。
 バチコーン打法とは、上半身よりも下半身の使い方を重視する「蹴る和太鼓」なんです。
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