間違ってもいいから思いっきり

私たち人間は、言葉で物事を考えている限り、あらゆるものを「是か非か」と格付けする乱暴な○×ゲームに絶えず影響されています。ここでは、万人が強制参加させられているこの言語ゲームを分析し、言葉の荒波に溺れてしまわないための知恵を模索していきます。

2014-01-01から1年間の記事一覧

「支持政党なし」は詐欺か挑戦か

2014年の第47回衆議院議員総選挙において、日本の民主主義のあり方を根本から問い直すような衝撃的な出来事が起こりました。 北海道比例ブロックで立候補した政党「支持政党なし」が有効票の4.2%にあたる104854票を獲得し、既存政党である社民党の50364票や…

選挙に行かないのは非国民?

日本では、選挙のたびにその投票率の低さが問題になります。 メディアやネットには、選挙に行かない人の言い分を封じ込めるために、「投票しないやつには政治に意見する資格などない」「選挙に行かないやつは非国民だ」といった主張が溢れます。 それに対し…

嫌いな相手を追い詰める方法

2014年11月2日に放送された「ニュースな晩餐会」というバラエティ番組にて、小学校の宿題をお金で請け負う業者が紹介されました。 それによると計算ドリルなどの単純な宿題の代行だけでなく読書感想文や絵日記の代行なども行われているらしく、代行が教師に…

おすすめの叱り方を紹介します

あなたは正しい叱り方を知っていますか。 「叱る」という行為は、家庭・学校・習い事・職場など、社会のさまざまな場所で行われます。 中には「どう叱っていいのかわからない」と悩んでいる人もいるでしょう。 私は「このように叱るのが正しい」と言える方法…

どうせなら背中で語ろう

給食残してしかられた俺の体を本当に心配してたのか嫌いなもの口につめこまれた常識的な発言と非常識な行動だうまけりゃ喰う これはザ・ハイロウズの『ゲロ』という曲の冒頭の歌詞です。 ここには「あなたのため」という大義名分のもとに、嫌いなものを無理…

なぜ勉強しなければならないのか

なぜ勉強しなければならないのか。 これは、近代教育の制度がすでに完備された国々で、多くの子どもたちが頻繁に口にする愚痴です。 <a href="http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2014/04/08/084900" data-mce-href="http://mrbachikorn.hatenablog…

日本の英語教育は無意味か

巷でよく言われている学校教育への文句に「日本の英語教育は効率が悪い」というものがあります。 このクレームの主な根拠は、中学・高校と6年間も英語教育に時間を費やしておきながら、ほとんどの日本人が学校教育だけでは英語で話せるようにはなっていない…

子育てを失敗したと思っている親たちへ

学習は本能です。どんな人も伸びています。あなたの物差しでは測れなくても。 これは、前回紹介した『強育論』にある宮本哲也の言葉を、私なりの教育観に合わせてアレンジしたものです。 ちなみに、彼のオリジナルバージョンは以下の通りです。学習は本能で…

過干渉を戒める劇薬

学習は本能です。どんな子でも伸びます。親が余計なことをしない限り。 強育論-The art of teaching without teaching- 作者: 宮本哲也 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン 発売日: 2004/03/17 メディア: 単行本 購入: 6人 クリック: 19回 …

お利口なワンちゃんが好きですか

「ホンマでっか!?TV」は、様々なジャンルの専門家や評論家たちに最新の研究結果や専門家の知見などを次々と披露してもらい、それに対して明石家さんまを始めとするタレントたちが面白おかしくリアクションを加えていくという情報バラエティ番組です。 この…

数学が得意になったわけ

私は小さなころから世間を狭くして生きてきました。 小学校が終わってから遊ぶ友達などもほとんどいないし、家は母子家庭で親は21時頃まで家に帰ってこないので、弟と家で遊ぶかテレビを見てボーっとするくらいしかやることがありません。 厳密に言うと、放…

国家の幻覚

普段は高校の非常勤講師として、数学を教えている私。 学校での授業はチャイムとともに始まりますが、チャイムが鳴るより前に教室に行くと生徒同士の雑談を耳にすることもあります。 そんな雑談の中で男子同士が「今回ばかりは積んだな」「次見とけよ」など…

集団心理という災害

東日本大震災が起きた2011年3月11日の昼すぎ、私はライブハウスで和太鼓演奏のためのリハーサルをしていました。 そのときはライブの準備で忙しくしていたため、「東北の方で地震が起きたらしい」という以上の大した情報は入ってきませんでした。 そうして夜…

歩兵教育の惰性

「安易に学級崩壊という言葉を使うのはおかしいのではないか」 そう私に語りかけてきたのは、小学校で勤める友人。 彼女は日本人なのですが、家族の仕事の関係で海外生活が長く、初等教育はドイツで受けています。 そのため彼女は、日本の初等教育のあり方を…

恋愛にたとえる数学

私の本職は高校の数学教師。 当ブログのテーマは人間を変容させてしまう言葉の影響力なのですが、こうした言葉へのこだわりも元々は数学との関わり方から生まれたものです。 http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2014/06/29/053200 数学とは、自然科学…

作り話の効用と賞味期限

当ブログの目的は、気付かないうちに私たちを洗脳していく言葉の影響力について、様々な角度から見つめ直していくこと。 http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2014/06/29/053200 中でも特に力を注いでいるのが、「言葉はそもそも何のためにあるのか」と…

生徒と語る自己啓発

以前「本当の幸せ」という記事で、この大袈裟な言葉に付きまとう「あなたは本当に幸せか」といった強迫的なメッセージの危険性について述べました。 <a href="http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2014/04/30/191700" data-mce-href="http://mrbachi…

正しい子どもと複雑な大人

高校一年生の頃、私は筒井康隆の『やつあたり文化論』というエッセイ集と出会いました。 この本の冒頭に収録されていた「ゴルフ嫌い」というエッセイは、当時の私に強烈なインパクトを与えます。 やつあたり文化論 (新潮文庫 つ 4-9) 作者: 筒井康隆 出版社/…

脳は不調を自作自演する

肩こりや腰痛や手足の関節痛など、慢性的に起こる激痛の原因は何なのか。 ニューヨーク医科大学のジョン・E・サーノは1980年代にTMS理論という仮説を発表し、慢性痛に関するそれまでの定説に反旗を翻しました。 それまでの医学の常識では、脊椎の構造的な異…

内田樹と私

私が内田樹の文章と初めて出会ったのは、大学院生だった2005年の夏。 彼は2005年5月3日に投稿した「憲法記念日なので憲法について」というブログ記事の中で、トリッキーな独自の護憲論を展開していました。 http://blog.tatsuru.com/archives/000961.php 『…

立憲主義か封建主義か

2014年7月1日、日本の安倍内閣は集団的自衛権に関する憲法解釈の変更を閣議決定しました。 この話題について語る人々を1ヶ月近く観察してきましたが、「憲法の解釈を閣議決定で変更するのは民主主義の原則に反する」といった論調を見るたびに「この人たちは…

バカリズムに学ぶ排泄の習慣づけ

2012年12月29日に放送された「すべらない話」の中で、お笑い芸人のバカリズムは排泄に関するディープな告白をしました。 それは彼が自宅のリビングでくつろいでいるときに起きました。 テレビを観ているときに尿意を催した彼はわざわざトイレに行くのを面倒…

3年前の願い事

以前勤めていた高校で10人にも満たない少人数クラスを受け持っていた頃、教室内にミニチュアの七夕飾りを作ったことがありました。 そのときはクラスの全員が短冊に願い事を書き、教室で育てている鉢植えにそれらを吊るしていきました。「10キロ痩せたい」 …

記述信仰からの卒業

言葉の根本的な存在理由は人心を説得すること。 世の中がどうなっているのかを描写したり記述したりするという役割は、言葉の本質とは全く関係がない。 これが私自身の一貫した主張です。 それに対し、言葉はそもそも世の中がどうなっているのかを描写したり…

洗脳だったら何なのか

当ブログのテーマは、良くも悪くも私たちの生き方を振り回してしまう言葉の影響力。 私たちの印象を左右し、行動の方針を説得し、ものの見方を刷り込み、気付かないうちに私たちを洗脳していくのが言葉です。 <a href="http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2014/05/23/035700" data-mce-href="http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2014/05/23/035700">失われた神を求めて - 間違ってもいいから思いっ</a>…

科学が存在する意義

私たちのものの考え方は、物質的な状況や思想的な流行といった時代ごとの背景に大きく左右されています。 以前の記事では、レヴィ=ストロースの提唱した構造主義やその著書『野生の思考』が現代社会を生きる私たちに与えている影響について、ごくごく簡単な…

流行と常識と思想

13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない。 これは、途上国の子どもに教育を与えていこうと活動している国際NGO「プラン」の日本支部による、「Because I am a Girl」という啓蒙キャンペーンの広告です。 このキャッチコピーを見て、あなたは何を感じと…

原子力発電は必要か否か

2001年の夏、大学院生だった私は「原子力発電は必要か否か」というテーマのディベートに参加していました。 このディベートはある面接の試験として行われたもの。 受験者はまず割り振られたチームごとに集められ、仲間同士で作戦を立てた上で本番に望むこと…

上辺だけで終わらないために

高校で受験数学を教えながらプライベートでは和太鼓や民舞の普及に努める私にとっての心の師は、思想家にして武術家でもある神戸女学院大学の内田樹です。 彼はその著書『邪悪なものの鎮め方』の中で、技芸における停滞について次のように語っています。 邪…

お行儀との距離感

私たち人類は、言葉や概念を獲得することでその行動様式を大幅に変化させていき、地球上における今日のような繁栄を実現しました。 しかし、言葉や概念によるヒトへの矯正はパワフルかつストレスフルなもの。 貨幣やモラルや学問といった社会的習慣の発明は…