間違ってもいいから思いっきり

私たち人間は、言葉で物事を考えている限り、あらゆるものを「是か非か」と格付けする乱暴な○×ゲームに絶えず影響されています。ここでは、万人が強制参加させられているこの言語ゲームを分析し、言葉の荒波に溺れてしまわないための知恵を模索していきます。

2014-01-01から1年間の記事一覧

バガボンドに学ぶ運動のコツ

井上雄彦の描く歴史漫画『バガボンド』にて、宮本武蔵が村のお母さん達に請われて剣を教える場面があります。 バガボンド(37) (モーニング KC) 作者: 井上雄彦,吉川英治 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/07/23 メディア: コミック この商品を含むブロ…

身体性を優先せよ

『海馬』『高校生の勉強法』『進化しすぎた脳』などの著作で知られる池谷裕二の活動テーマは、脳科学の視点から見て「よりよく生きるとは何か」を考えること。 楽しく、ごきげんに生きるために脳科学の成果を活かそうとうする彼の脳の捉え方が、『脳には妙な…

○×はしんどい

世の中にはヨガや禅などをはじめとする数多くの瞑想法があり、適切な方法で瞑想すると自分と周りの世界との境がなくなって「宇宙と一体となったような感覚」が得られると言います。 こうした神秘体験の存在は「大いなる存在に繋がっている」といった信心を生…

オカルトの誘惑

20世紀中盤に活躍したカナダ人医師のワイルダー・ペンフィールドは、30年間で750人ほどのてんかん手術を手がけました。 数々の開頭手術の中で彼は、局部麻酔した患者の脳のさまざまな箇所に直接電極を当てて、その際の患者の様子や感想を克明に記録していき…

核ミサイルまがいの潜在意識ビジネス

言葉とは、私たちの脳に無数の思い込みを書き込んでいく暗示プログラムのようなもの。 自覚なく不用意に植え付けられた浅はかな思い込みは、人々の生き方を無闇に縛りつけてしまいます。 そうした刷り込みの影響力を当たり前に考慮に入れて全ての言動と付き…

失われた神を求めて

数千年前の古代人たちは、現代の私たちが抱いているような主観的で意識ある心を持ち合わせておらず、右脳から聴こえてくる神々の声に従って生きていた。 前々回の記事で紹介したジュリアン・ジェインズは、1976年に刊行した『神々の沈黙』でこの途方もない仮…

意識の役割

意識とか心とか魂などと呼ばれている〈私〉たちの内面的な情景は、〈自分〉という肉体の生理機能が演出している幻のようなもの。 そのおかげで〈私〉たちはそれぞれの肉体の主のような錯覚に捕らわれていますが、「実際の主は肉体そのものの方であり、意識な…

心は体の主人ではない

意識の正体は何か。 そして、それはどこから生まれてきたのか。 この伝統的な問題を長年にわたって研究してきたプリンストン大学のジュリアン・ジェインズは、1976年に刊行した『神々の沈黙—意識の誕生と文明の興亡』において次のような仮説を打ち立てました…

世界は比喩でできている

一般に比喩と言えば、言葉を文字通りの使い方や標準的な使い方とは別の方法で用いることを指します。 例えば〈草食男子〉という喩えは、文字通りの「草を食べる男の子」とは違った意味合いで使われる言葉です。 今回は、この比喩という概念を拡大解釈するこ…

夢の呪縛

夢とは元々、眠っているときの脳内体験のことを言います。 夢の中での出来事はバーチャルなものですから、覚醒している時とはかけ離れた体験をすることもあります。 ですから、私たちが使用する「夢のような」という喩え文句には、「現実離れした」といった…

打算で夢を語るな

2014月3月20日放送の深夜番組「アメトーーク!」にて、お笑い芸人の小籔千豊が「テレビに出てる人間が夢は叶うなんて軽々しく言って回るな」という持論を披露して注目を浴びました。 インターネット上では「よくぞ言ってくれた」と評価する声もあれば、「今…

本当の幸せ

教員になって1年目のときの出来事です。 仕事を終えていざ帰ろうと職員室を出てみると、職員室のすぐ外で同僚が1人の生徒と話し込んでいました。 その生徒は職員室から出てきた私を見て、同僚に聞いていたのと同じ質問を私にも振ってきました。「先生はいま…

アキレスと亀の詐術

私たちが生きているこの社会は、ヒトが持つ動物としての野生を去勢させることで成り立っています。 http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2014/04/26/235800 私たち人間は、この弱肉強食の世界に婚姻、貨幣、善悪、神、法律、数式といった独自のルールを…

去勢されない強さ

強さとは我儘(わがまま)を押し通す力のこと。 これは、人気格闘漫画『グラップラー刃牙』など板垣恵介の作品群に共通している不変のテーマです。 グラップラー刃牙 (39) (少年チャンピオン・コミックス) 作者: 板垣恵介 出版社/メーカー: 秋田書店 発売日:…

変なおじさん宣言

私は私立高校の非常勤教師として教壇に立ちながら、和太鼓・お囃子・民舞など日本の民俗芸能の普及活動に携わっています。 教師としてのキャリアは9年目で、これまでいくつかの高校で受験数学を教えてきました。 現在勤務している大阪の高校に来る際、採用試…

制度は動機を内面化する

私は現役の数学教師ですが、一般的な教師像とはかなりかけ離れた信条の持ち主だという自覚があります。 それは、私自身が教育そのものに対するありがちな動機を内面化していないから。 内面化というと何やら難しい言葉に聞こえますが、要は「学校での教育は…

数学の特権

果たして数学はヒトの教育に必要不可欠なものか。 現役の数学教師である私の答えはノーです。 もしヒトの成長に数学が必要不可欠というのであれば、近代教育の普及していない国は未熟者だらけだと言っているのと同じ。 世の中にはそのような考え方もあると思…

友達はいらない

私たち人間は、言葉で物事を考えている限り、あらゆるものを「是か非か」と格付けする乱暴な○×ゲームに絶えず影響されています。 この野蛮な影響力は、様々な人間関係から立体的に編み出されていく集団心理の賜物。 この集団心理の怖さを物語るような場面が…

数学を勉強して何の役に立つのか

私は高校の非常勤講師として、パートタイムで数学を教えています。 このような仕事をしていると、「数学を勉強して何の役に立つんですか」という質問を受けることがあります。 このワンパターンな質問に対して、私は「どう役に立つのか」と愚直に解説するこ…

真理ムラの癒着と圧力

日本における原子力発電の安全神話は、2011年3月11日に起きた福島第一原発の危機的事故をきっかけに崩壊しました。 ですが、それまでの日本では原発推進が国の規定路線としてまかり通っており、反原発を声高に唱えるような人は社会的圧力によって村八分にさ…

責任ある大人のマナー

言葉とは、まるで放射性物質のような存在です。 電気信号として脳に刻まれた言葉は、影響力という名の放射線を脳に浴びせ続けることによって、私たちの在り方を変容させていきます。 生物としてのヒトの身体構造は約20万年前にほとんど完成したわけですが、 …

就職も結婚も入れ歯と同じ

この世界は、各々の都合と都合とがしのぎを削る弱肉強食の説得合戦の場。 たとえば人間の赤ん坊だって、この説得ゲームの熱心なプレイヤーの一人です。 彼らは可愛らしさを武器にして周囲の大人たちを自分に都合のいいように操りますし、気に入らないものに…

素敵な「大人の条件」

成人の基準というのは場所や時代によって様々ですが、現在の法治国家においては法律によって年齢のみで決められていることがほとんど。 どの国の成人の年も、だいたい14~21歳の間に収まっています。 しかし、そういった法律が定める成人の基準とは別に、「…

作り話の楽しみ方

この世を仕切る「正しさ」という物差しなどどこにも存在せず、世界にはただ「都合と力のバランス」があるだけ。 http://mrbachikorn.hatenablog.com/entry/2014/03/18/064700 こう考えていた大学時代、私にとって「正しさを競う舞台」としての言論の世界は非…

常識の方程式

世間での言葉の使われ方について、私がとことん追究し始めたのは数学を専攻していた大学生のころ。 私は物心ついた頃からずっと、人の行動を仕切りたがる押し付けがましい言葉の圧力に違和感を覚えており、他の要領の良い子たちのようには上手く折り合いをつ…

全人類プロレス

この世界は、力が支配する弱肉強食の説得合戦の場。 私たちは生まれたときからすでにこの舞台のプレイヤーの一人であり、さまざまな力を用いて互いに説得の応酬を繰り返しています。 ヒトの生存戦略 - 間違ってもいいから思いっきりmrbachikorn.hatenablog.c…

世の中は間違ってる?はあ??

その昔、 J's Barという村上春樹のファンサイトがありました。 ここにはQ&Aというコーナーがあり、いろんなお題を出し合ってはそのお題に答えていくというスタイルで、ファン同士の交流が大変盛んに行われていました。 私も学生の頃はこのQ&Aのさまざまなお…

なぜ人を殺してはいけないのか

あるテレビの討論会で、小学生が「なぜ人を殺してはいけないのか」と素朴な疑問を述べ、そこにいたコメンテーターたちが上手く答えられずに困り果てたという出来事が一時期話題になりました。 今回はこうした「大人の理屈」の機能とその限界を分析していくこ…

人類を飼い慣らした物語

ヒトを文明社会の担い手へと仕立て上げてしまう言葉の影響力には、ある巧妙なトリックが隠されています。 今回はこのトリックの種明かしをすることで、言葉の荒波に溺れてしまわないための基本的なモノの見方を掴んでいきたいと思います。 喰うか喰われるか…

ヒトの生存戦略

あなたは何ものかに喰い殺されそうになったことがありますか。 私自身は幸運にも、まだそのような補食の危機を経験したことがありません。 ですが野生の動物たちにとって、喰ったり喰われたりは当たり前の日常です。 私がこれまで何ものにも喰われることなく…